甘い嫉妬


ギシギシとベッドのスプリング音と水音が混じる。


肌と肌とがぶつかる音に、漏れ出す吐息が何とも煽情的だ。


「…っは、やば……っ、イク………っ」


『いい、よ……っ、中、いっぱい出して……っ…』


ゴム越しに感じた熱に、二人の男女が繋がったまま、ベッドに身を預ける。


お互いの汗ばむ肌が張り付いて、一つになってしまったような錯覚に陥る。


はあはあ、と荒い呼吸を繰り返し二人はお互いを抱きしめた。


『あー、和成暑いわ』


「とか言って離れる気ないくせに」


けらけらと笑いながら和成と呼ばれた少年は、自分の腕の中にすっぽりと収まる少女、名前を愛おしげに更に強く抱きしめた。


『あーつーいーっ』


ぺちぺちと軽く和成の腕を叩く名前も満更ではなさそうだ。


     


『…あ、そういえば新しい子入るらしいよ、部活』


部活のメニュー表を持ちながら名前が和成に思い出したように話す。


「へー。こんな時期に珍しいな」


和成はあまり興味なさげにダムダムと音を鳴らしながらドリブルをする。


そのまま綺麗なフォームを作り、吸い寄せられるようにゴールに入るボール。


『折角部員全員の課題や特徴覚えたのにまた増えたなあ』


そんな彼のゴールを見ながら名前は嫌そうに答えた。


「そこはお前頑張れよ、マネージャーなんだからさwww」


『草生やして笑うな』


「へーい」


全くもって反省していない声で返事する和成に一つため息。


それにしても、同い年と聞いたその入部希望者だが、中学もあと一年と少ししかないこの時期に入部とは珍しい。


「名前、ちょっといいか」


部長に声を掛けられた名前は、和成の傍を離れて部長に着いていく。


「あ、初めまして」


部長の後ろを着いていき、部室に辿り着くと、そこにいたのは恐らく入部希望者だろう。


こちらに気付くとにこりと人の良い爽やかな笑みを浮かべるその顔はなかなかに整っている。


『初めまして。マネージャーの名前です。他のマネージャーの子達にはもう会った?』


そう尋ねると頷いたので、私が最後だったのだろう。


「2年のマネージャーはこいつだけだ。大体メニューは俺からも伝えるが、もし分からないことがあればこいつに聞いてくれ」


「分かりました」


部長の言葉に頷いたのを確認して、入部希望者の子を連れて体育館に向かう。


何でも最近引っ越してきたらしい。


そういえば和成のクラスに転入生がいると言っていたなあ、と今更ながらに思い出す。


和成と同じクラス?と尋ねると、和成の人柄のお陰かそれなりに馴染んでいたようで思いのほか話が盛り上がった。


     


放課後、何とか入部してきた子達と他のメンバーが馴染んだのを確認して掃除に入った。


残って練習するメンバーもいるだろうが、この時期は暫く試合がない為するのは和成くらいだろう、そう思ってのことだ。


「じゃあ後戸締りは任せた」


『はいよ 』


案の定皆が帰って行くのを眺め、一人シュート練をする和成に近づく。


毎日毎日飽きないものだ。


それだけ和成のバスケにかける想いがよく分かる。


じーっと、眺めていると、ふと気付く違和感。


何かいつもより荒い投げ方をする気がする。


入ってはいるが、リングに何度かぶつかり入るそのシュートはいつもの和成のシュートとは違っていた。


『…和成、』


どうしたの?と尋ねようとしたところで和成が振り返った。


「名前、帰ろっか」


へらりと笑ったその顔もいつもとは何だか違う。


すたすたと先に片付けをして部室に行ってしまった和成を、私は慌てて追いかけた。


     


和成がいる部室に足を踏み入れたと同時に引かれた腕。


それに驚いてぎゅ、っと身を硬くすると降ってきた荒々しい口付け。


『ん…っ、かず…な、りっ』


壁に押さえつけられ、腕を一まとめにされ身動きが取れなくなってしまう。


荒い口付けに酸素を求めて口を開けると、その隙に侵入してきた和成の舌が私の舌を絡めとる。


段々と力が抜け、ずるずると壁伝いに座り込む。


それを阻止するかの如く和成の足が足の間に差し込まれ、緩く秘部が刺激されることにより声が漏れる。


『…っは、和成ったら……っ』


「何?」


『何、じゃなくて……っ、ここ、部室……っ』


あまり入らない力で出来る限りの抵抗をするも、和成によってベンチに押し倒された。


「そんなこと言ってるけどさ、ここ、びしょびしょだぜ?」


いつもならニヤニヤとしながら聞いてくるセリフであるのに、真顔で聞いてくる和成。


その姿に違和感が強いものとなった。


普段ならもっと優しいのに。


意地悪だけど、何だかんだ和成はいつも優しい。


胸元に顔を埋める和成の頭を優しく撫でながら声を掛ける。


『ねえ、どうしたの、和成。今日変だよ』


よしよし、とゆっくりと撫でると胸元に感じた熱。


「だって名前のタイプなんだもんあいつ…っ」


そう言って泣き始めた和成に戸惑う。


あいつって、今日入部して来た人だよね。


確かに爽やかでイケメンで面白いし黒髪だし、私のタイプだけどさ。


でも何ていうか、興味ないんだよなあ。


ぐじぐじ泣く和成を見てくすりと笑みが漏れた。


それもこれも和成のせいなんだけど。


和成のつむじにキスを一つ落とす。


『嫉妬、してたんだ?大丈夫だよ、和成のせいで和成にしか興味なくなっちゃったんだからさ』


やっと顔を少しこちらに向けた和成の額にキスを落とす。


『…で、私のこのムラムラの責任はとってくれるのかしら?』


ニヤニヤと和成を見て意地悪に問う。


すると、和成は漸くいつも通りの笑顔で笑った。


「お姫様の仰せのとおり」


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